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心理社会的要因による腰痛

腰痛を引き起こす疾患もない、腰自体に痛みを引き起こすような機械的トラブルもみつからない、なのにいつも腰が痛い。そんなとき、心理社会的な要因を、腰痛を起こす要素として考える必要があります。ここでは、そのような心理社会的要因による腰痛を解説します。

慢性化させる要因に関する研究

hana44.jpg腰痛、とくに6ケ月以上経過した慢性腰痛のなかには、検査では痛みを起こすような組織の異常や動きがみられないにもかかわらず、苦痛を訴えるケースが多々あります。このような慢性化した腰痛形成に影響するさまざまな因子を調査した研究があります。そして次のようなことが判りました。文末のレベルは、根拠の強さ(A>B)を示しています。
 
【1】職場の支援が乏しいと急性腰痛が慢性化しやすいという強力な証拠がある(レベルA)。

【2】腰痛によって長期間(1〜3カ月以上)仕事を休んでいると、通常業務に復帰するのは難しくなり、休職期間が長くなるにつれて復職のチャンスが失われてゆき、職場復帰へ向けた治療も効かなくなるという強力な証拠がある(レベルA)。

【3】心理社会的苦痛、抑うつ気分、痛みと活動障害の深刻度、過度な症状の訴え、患者の予想、そして発症前のエピソードは、慢性化の予後因子だという中等度の証拠がある(レベルB)。
 

安静に一利なし

1と2は、職場における腰痛を訴える就労者支援が乏しいと、腰痛のため休まねばならない期間が長くなり、治療が効きにくくなって、慢性の経過をたどる傾向があることを示しています。つまり、腰痛があっても周りの助けがあって仕事を乗り切れるような職場であれば、仕事を長く休まずに早くから働き出せるので、結果的に急性腰痛は慢性化しにくいということです。これから考えられることは、痛みがあっても早く動き始めたほうがよいということです。そこで欧米の急性腰痛ガイドラインでは、急性腰痛からの復帰を遅くするとして安静を推奨しません。
 

心理的要因

3は、腰痛の慢性化に心理的な要因が関係していることを示しています。現在も多くの医師や治療者が腰痛には痛みの原因となる身体的異常があるはずと考えています。しかし、慢性腰痛の中に、原因となるような身体的異常を見つけられないものがあることは、腰痛治療に携わるものは経験しています。ではなぜ、異常もないのに痛みが起こるのでしょうか。その理由を理解するには、痛みの成り立ちについて知る必要があります。
 

痛みの成り立ち

痛みは、脳に起こる情動(感情)をともなった知覚の一種です。重要なのは、痛みは「脳で起こる」という点です。痛みを知覚するしくみは、体を侵害する刺激が加えられると、痛みのセンサーが興奮し、それが神経を伝わって脳に達すると、大脳皮質の感覚野が興奮して「痛い!」と感じるというものです。同時に情動を司っている大脳辺縁系にも興奮が伝わり、「不快感」「不安」「怒り」などの感情がわき起こることになります。
 

刺激がないのに起こる痛み

このように痛みは、痛みセンサー→神経→大脳→知覚・情動発現という一方通行のしくみをはじめは考えられていました。しかし、神経生理学の発達で、そのしくみはもっと複雑なことが判ってきました。実際には痛み刺激がないのに痛みを感じる、そんな現象があります。この現象は、ひとつには脊髄にある痛み刺激を中継する神経細胞が敏感になって起こるもの(この痛みをアロデニアといいます)があります。また別なものに、同じ痛み刺激を与えても、不安や恐怖などの感情があると、痛みを感じやすくなります。そのメカニズムは、痛み刺激の経路(脊髄の神経細胞)を抑えたり促したりする働きが大脳皮質にあるためと考えられています。
 
これでわかることは、実際に感じる痛みのつよさは、体に与えられた痛みを引き起こす刺激の量で決まるのではなく、脳に至るまでの神経経路にさまざまな修飾が起きて、最終的な「脳で感じる」痛みの強さが決まるということです。
 

腰痛は怒りである

心理的な状態が、痛みを強く感じさせることはわかりました。もうひとつ、アメリカのニューヨーク大学医学部教授のDr.ジョン・E・サーノは、著書「腰痛は怒りである」でTMS理論という考えを提唱しています。TMSとは、緊張性筋炎症候群(Tension Myositis Syndrome)のことで、「痛みを伴う筋肉の生理的変化」とサーノ教授は定義しています。そして、肩こりや腰痛、手足の痛みなどこれらがすべて共通の原因によっておきうる症状であるということです。その共通原因を心理社会的因子であるとするのがTMS理論です。

慢性腰痛の原因

前に述べたように慢性腰痛のなかには、痛みの原因となるような身体的異常がないのに腰痛が続くものがあります。系統的な調査で、そこには心理的要因が関係していることがわかってきました。
また痛みの成り立ちから、痛みは実際の痛み刺激を必ずしも反映するものではなく、不安や恐怖などの感情に左右される「脳の中の幽霊」のようなものであることもわかっています。ふたつの事実からあることが推論できます。それは、不安や恐怖などの感情が腰痛を起こす可能性です。

この腰痛はどうしたらいいのか

このような心理的要素をもつ腰痛に対して、日本では長谷川淳史先生の主催するTMSジャパンが「TMSジャパン・メソッド」という腰痛治療プログラムを提供しています。

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